俳優Mahoと、日頃から美・健・攻に努める10人の仲間たちのNYサバイバル生活。New York based actor Maho Honda's official blog!


by zhensui-maho
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やまとくんの安楽死

やまとくんは、公園の草むらの中でジタバタしているところを発見され、つれて帰られた。

飛べないハトだ、こりゃたいへん!

立ち入り禁止の柵をよじ上り、何度目かのトライでパフッとつかむと、羽毛のやわらかさにはっとした。まだ巣だって間もない若いハトだった。

捕まえたのでほっと一息。我に返って後ろを振り向くと、片方の靴ははるか遠くに脱げており、メトロカードを取り出したままだらしなく開いていたバッグから飛び出した化粧品やらなんやらが、緑の草の上に散らばっていた。

ちょうどみんな夕方のまったりムードだったからか、ヴィッキーの身ぐるみ振り乱した一世一代のハンティングに気づく者はいなかった(たぶん)。

それでも一応人の目が気になるので、このハトを洋服の中にいれて持って帰った。

お家を準備してさぁ入れよう、と取り出してみると、なんと目をつぶっていた。人間の胸ぐらで眠るなんて、いい度胸だ!と思うと同時に、ものすごく衰弱しているのかと心配になった。

頭のてっぺんを見るとかさぶたがあり、そのせいでギャル男風に毛が立っていたので、いかにも”やまと”っぽい。「やまとくん」と命名したのはこのときだ。


やまとくんは、とても人懐っこかった。

一日経つと、ちょっと元気になり、巣立った一人前のハトのくせにエサをおねだりした。

ごまめが始めは”さん”付けで呼びたくなるくらいよそよそしかったのに対して、やまとくんはとても無邪気でかわいい。


やまとくんは、足が麻痺していた。

そのためにまったく飛べなかった。診察に連れて行ったWild Bird Fundでも、原因がよくわからなかった。おそらく、事故だろう。

頭はもう治りかけだったので、飛べないところを他のハトにつつかれて邪魔者にされたときにできたものだろうということだった。

エキスパートHによってAPRCに引き取られ、毎日注射をしてもらうことになった。


やまとくんは、日に日に小さくなっていった。

注射でよくなる気配がない。それどころか、元気がなく、目をつぶってうとうとしている回数が増えた。

触るとかろうじて反応があった足も、もはや白っぽく変色し、血が通っていないようだった。終いには、エサを食べるときも力なく横からつつくようになった。

ワイフKは「ストレスのせいで、PMVが出てきたかもしれない。」と言った。

※PMV=まだ明らかになっていないのだが、免疫力が下がったときにでてくるウイルス性の症状で、ヘルペスのようなものだと思っている。

こないだのWBFで、飛べるようになる見込みのないハトは,安楽死の可能性も考えておいてください、と言われていた。

いやな予感がした。


やまとくんに、決断が下された。

これがレッド(鉛)中毒なら、治せる。最後の望みをかけた鉛検査では、期待もむなしく何も検出されなかった。

やまとくんを助ける術はもうなにもなくなった。

日に日に命の火が小さくなっていく苦しそうなやまとくんをみていられず、安楽死が最善だと勧められた。最後まで見届けてやるのが、レスキューしたわたしの責任だと思った。

抱き上げると、ポワポワの羽毛はそのままで、すごく軽くなっていた。目をつぶり、首もだらりとうなだれて、意識がもうろうとしていた。

やまとくんに注射針が差し込まれ、ピンク色の液体が入っていった。

「死に際にハイになって暴れたり、動いて薬を吐いたりするからしっかり押さえていてあげて」と言われていたけれど、やまとくんはまったく動かず、とても気持ち良さそうな顔で眠るように亡くなった。

あぁやっと肩の荷が下りた…と言わんばかりに。


やまとくんが、ただの小さなポワポワのかたまりになった。

トクトクという音が消えたやまとくんの体は、3分前までは動いていたのが不思議なほど静かで、まるでよくできた作り物のようだった。

最近はipadやなんやのおかげでで多くの人が認識しているけど、生き物には電気が絶えず流れている。その電気は、目には見えないけど、生き物同士が肌で感じ取って反応し合っているんだと思う。

身にまとう電気の量が多い人は、いろんな人の電気を引きつける。まさにこの電気が、”オーラ”と呼ばれるものなのだろう。

「オーラの泉」で有名な井原さんもそうだが、昔から占い師の職に付くような人たちは、他人の電気をものすごく敏感に感じ取ることができるのだろう。

死んで電気が流れていない体というのは、生きていたときのそれとは似ているようでまったく別物だなぁ…と、冷静に考えている自分がいた。

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保護2日目の、立てないけど無邪気なやまとくん。


命は、ざっくり分けると、精神(魂)と肉体でできている。

形ある肉体の生死は明らかだが、魂の生死の境はあいまいだとわたしは思う。

魂は、自分以外の人とみんなで分け合って存在しているんじゃないかと思うのだ。

死んだ人の魂は生きている人の心の中で生き続けるといういわれがあるけど、もともと生き物として存在する者たちすべては、関わりがあった同士で存在を分け合って成り立っているのではないか。

だから、大切な人が元気でいてくれるだけで、自分もしっかり前を向いて生きようと思える。

だから、大切な人が死んだとき、大切な人にもう会えなくなったとき、自分の心の一部も死んでしまったような、そこだけ心にぽっかり穴があいてしまったような、大きな空虚感に襲われる。

ニューヨークにきて始めの頃、道を歩いていて、

”今死んだら、誰も知らないこの土地で、Nobodyな死体として処理されるんだなぁ…”

という思いがめぐったものだが、覚えてくれる人がいないまま消えていくのはすごく怖い。

短い間だったけど、やまとくんと出会えてよかった。

やまとくんのかわいらしさと強さを覚えていることで、彼の存在がわたしの中に刻まれたことが、少しでも供養になるだろうか。そもそも言葉が通じない相手だから、自分の感情を当てはめて考えることしかできないのだけれど。

今もいろいろなことが頭の中をめぐっているけれど、動物に対する「安楽死」という決断に慣れることはないのかなぁと思う。

あんなに弱っていたやまとくんは、おそらく遅かれ早かれ死んでしまう運命にあったろうと思う。

てんてこ舞いに忙しいWBFで、他の鳥たちの治療の障害になるから、という理由ならやむ終えなかったかもしれない。でも、やまとくんの場合は、わたしが連れて帰って、最後までみとってやることもできたわけだ。

動物は、自殺をしない。人間みたいに、どんなに苦しくても、「いっそ殺してくれ」と言わない。

淡々と自分の存在と置かれた環境に向き合い、弱音を吐かず、授かった生を精一杯まっとうしようとする。

苦しむハトを見ているのは、すごくつらい。自分だったらいっそ殺してほしいだろうな…と多くの人が思うだろう。

しかし、そこで実際に手を下すことは、知能ばかりが発達して、苦難を避ける術を身につけたあげく、逆に精神的に弱くなってしまったとも言える人間たちによる効率主義の産物ではないのか。

生きていると、楽しいときと苦しいときがある。楽しいことに集中して、苦しいときだけ何も感じないようにシャットアウトしていると、感情全体が薄くなり、結局は楽しいことすらあまり感じなくなる。

人生が、ぬるま湯につかっているように変化がなく、つまらないものになる。

無感情で無表情のロボットみたいな人間になっていくような気になる。

やまとくんは、この世に生を授かった者の責任を背負い、苦しい瞬間も最後までしっかりその小さな体で受け止めて死にたかったのではなかろうか。

生きているからこそ持てる「苦しむ権利」を、わたしが安楽死という名目で正当化して奪ってしまったのではないか。

ごまめを含めて、死にゆく命をレスキューしたことだって、自然の摂理に反しているという葛藤が始めからあった。いずれ、この矛盾に向き合わなければいけないときがくると思っていた。それが、今回のやまとくんの安楽死だった。

きっと、「どうしても見捨てられない」という理屈ではない強い衝動に駆られる限り、わたしは死ぬ運命のハトを拾い続けるだろう。

そして、人間によるハトへの害と、彼らをレスキューすることと、安楽死という最後の手段の間で、揺れ動き続けるんだと思う。

今はただ、処理しきれない責任の重さを前に、子供のように無力感を噛み締めている。


b0186354_10324140.jpg実は前記事のジンジャーも、なっかなか進展しないので安楽死の可能性があると言われていたのですが、APRCで徐々によくなってきているらしく、ほっとしています。

なんだか,今日は悶々と書いてしまいましたね…。

by Vicky


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by zhensui-maho | 2012-05-27 11:01 | Essays