ごまめ日記は44日目。最終日の朝。

ジッパーを開けた瞬間、それまで暴れていたのがウソのように静かになった。
一瞬ためらい、足下を確認すると、目の前に限りなく広がる世界めがけて、ごまめは飛んだ。
そのまま高く飛んでいくのかと思ったら、ちょっと体が重そうな低空飛行だ。5mほど先にいた、同じく公園でエサを食べている仲間のドバトに混ざって、地面をコツンコツンとつつく。


いきなり取り戻した自由を持て余したのか、少しよろける。仲間に混ざって、はしゃいでいるように見える。
Ayumi "なんか、ごまめちゃんおっきくない?"ほんとうだ。他のドバトに混ざると、モフモフで大きい。確実に太ったね、太りましたよあなた!。
次に近くの木の上まで飛び上がり、多少手こずりながらも体を安定させる。
グルグルグルグルと鳴いて、1ヶ月半ぶりの自分の庭が変わりないことを確認するかのように、おなじみのきょとん顏で辺りを見回した。
わー
おぉぉー
だだだー(ダダ泣き。)ぞろぞろとごまめについていく我々。ごまめ動けば、応援団も動くのである。
そしてついに、マンハッタンのビル郡の彼方に飛んでいって、見えなくなった。
…ように見えたが、交差点のカフェのキャノピーの上に白い顔。
あぁ!ごまめである。
ぞろぞろぞろ。
ごまめ、キャノピーの上をうれしそうにいったりきたりしている。
その度に、あのなんとも間の抜けた顔がひょこひょこ飛び出すので、一同大爆笑。あははわははは。ひーー。
そこはなんと、ごまめがはじめにへたっていた道路の真向かいであり、そのキャノピーは、粋なニューヨーカーたちがごまめに手を貸してくれたあのカフェのものだった。(拾ったときのいきさつは
こちら)
ワイフK ”なるほど、あそこに巣があるのね。”そうか、あそこはごまめの巣だったのか。
ってことは、あのときは、巣から出てすぐに車にはねられたんだな。そしてヴィッキーは、ごまめがはねられたまさにその瞬間に通りかかって発見したんだな。
巣材を運んでいる最中だったのだろうか。卵を温めているときや、ヒナを育ていていたときだったら、きっと子供や奥さんにとっては不幸な事故だっただろう。
なんて思っていたら、ごまめが巣から向いのビルのキャノピーまで飛んだ。
そこには、日光浴するハトカップルの先客がいた。オスの方に頭をむしられて、明らかにごまめの負けなのだが、なぜか組み合ったまま固まっている。
逃げなさいよ!はらはらする。やはり野生だとトロさが命取りか。
結局、このオスと20秒くらい抱擁し合った後に競り落とされ、ごまめは巣のあるこちらのキャノピーに戻ってきた。
と思ったら、今度は別のオスが接近してきた。
どうやら、ごまめ不在の1ヶ月半のあいだに、別のハトにこの巣の場所をとられてしまったようだ。ドバトの世界のサバイバルは厳しい。
ドバト同士のサシの死闘が繰り広げられる、某カフェのキャノピー上。固唾を飲んで見守るごまめ応援団たち。
ここでもごまめが劣勢のように見えたが、飛んでいかない。
ディズニーのアニメのようだ。ドタバタとした音の合間にぴょこんと頭や羽が見えたと思ったら、羽毛が宙を舞う。
ごまめの羽。どたばた具合は拾ったときから変わらない。エキスパートH ”あんなに隙間に挟まってばかりのごまめちゃんが、これだけ戦えるようになったんだから、すごいよ。”たしかに。ちゃんと回復させてから放してよかった。
我々が
Oooh! とか
Ah! とか言いながらあんまり必死に観ているもんで、通行人も何事かと気にしだした。挙げ句の果てにカフェの兄ちゃんが出てきた。
迷惑がられたら困るなぁと思いながらも事情を話すと、
”Cool! じゃぁボクはごまめに20ドル賭けるよ。”と陽気な声でフェミニンに言い放ち、その後も繰り返し勝負の結果をのぞきに来ていた。
そうして結局20分くらいもみ合っていただろうか。
このままではラチがあかない。2羽とも疲れ果てて静かになったところで、名残惜しくも我々はその場を後にした。
勝負の結果はわからず終いだったが、ごまめが勝って、あそこを通るたびにいつもごまめを見かけられたらいいなぁ。
約1ヶ月半のブランクを埋めなきゃいけないので、始めは大変かもしれない。生ぬるいアパート生活を経て、まるまると太っちゃったし。
でも、きっと元気にやってくれると信じている。なんてったって、ごまめは幸運のハトだもの。
周りの誰も行ったことのない不思議な場所に一ヶ月いたこと、奥さんや友達のハトたちとの話のネタにしていただきたい。もし、口コミでケガした仲間のハトがやってきたら、世話してあげるよ。
あんなにうれしそうに飛びたったごまめ。最後の放鳥の日まで、軽やかにはいかずにひと騒動をやらかしてくれたごまめ。
腰の曲がったごまめが、元気に大空を飛んでいるところを想像すれば、いつだって心に灯りがともったように元気になれる。不思議と涙が出てきてしまうのは、だいじな友達がいなくなって寂しいからだけじゃない。
外に出れば、頭の上には大空を自由に飛び交うハトたちがいる。ヴィッキーも、これからも上を向いて歩こう。
ありがとうごまめ。元気でね!
☆追記
写真家のAyumiさんに撮っていただいた当日の写真はこちら
ごまめのその後はこちら☆☆☆☆☆
なにかに取り憑かれたかのように毎日つづったごまめ日記は、今日でおしまいです。ご愛読、ありがとうございました。ヴィッキー、燃え尽きました。笑。
きっと、いつか空に返したらごまめともう2度と会えなくなると知っていたから、形に残しておかなきゃと思ったんだと思います。
あ、気まマホ日記は相変わらずこれからも続きますので、そちらもよろしく!
by Vicky
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